局所療法
副鼻腔炎における局所療法
鼻腔と副鼻腔は複雑な解剖学的形態をしており、なかでも上顎洞には鼻腔との交通路として、自然口に加え小径の副口が複雑な形状と機能を有する中鼻道粘膜の裂隙中に開存しており、日常的に洞の換気や分泌物の排泄がおこなわれています。
鼻腔・副鼻腔における急性感染炎症においては、防御機構が有効に働いて速やかに炎症が終息すれば問題はありません。
しかし、副鼻腔は自然口を介して鼻腔と交通しているものの、一度炎症が惹起されると自然口付近の炎症性変化により、自然口からの炎症産物の排泄や換気が不良になり、閉鎖腔になりやすいという特徴があります。
閉鎖腔は炎症の悪循環が容易に形成されやすく、発症因子としての細菌あるいはウイルスによる感染が終息しても、閉鎖腔での炎症の悪循環が継続し、炎症が慢性化し慢性副鼻腔炎(蓄膿症)への病態に変化していきます。
したがって副鼻腔内の炎症を消退させるためには、閉鎖腔での炎症の悪循環を遮断することが重要です。発症因子としての細菌やウイルスの排除においては、抗菌薬の全身的あるいは局所的投与が必須となります。
一方、鼻腔・副鼻腔に存在する粘膿性の鼻漏(微生物を含む)の吸引除去のための鼻処置や、副鼻腔からの炎症産物の排泄や換気の改善を目的とした自然口開大処置、さらには抗菌薬の副鼻腔への到達や綿毛運動輸送機能の改善を目的としたネブライザー療法は、副鼻腔炎の治療において、重要かつ有効な手段とされています。